窯はやきものを仕事や趣味にする人間にとって、もっとも重要な設備・道具です。
やきものを作るには窯で焼成するという工程が必ず必要です。様々なモノづくりにおいて、「窯」による加熱の工程がある産業のことを「窯業」といい、陶磁器製造もその一分野です。
一窯、二土、三細工、または一土、二窯、三細工、など各陶産地では昔から焼成こそがもっとも重要な工程だという戒めの言葉が残されています。習い始めたころ、菊練りやロクロに夢中になってしまいますよね。わたしもそうでした。しかしロクロの上達や、陶磁器への深い理解を得るには、窯を通して、焼成を通して考える必要があります。
現在では小型の電気炉もあり、2,30年前では考えられないような効率の良い学び方ができるようになりました。
陶芸歴○○年という言い方をすることもありますが、本当の作陶のキャリアとは、自分が責任者として、何回窯焚きを行ったかです。もちろんできれば自分の窯で行う方がいいですし、電気炉でも焼成パターンを自分で考えて設定することが必要です。
ここに気付くことで、「やきものの本当の楽しさ」を知ることができます。
自分で積極的に焼成を行うことで、ロクロなどの技術も劇的に向上します。それは土練りから焼成までを一貫して自力で行うことで、おおきなパラダイムシフトがおきるからです。
自主陶芸は楽しい!
残念ながら安くて良い窯はありません。優れた窯は、まずまちがいなく国産です。日本人が誇りをもって国内生産しているのです。日本有数の窯業地では、多大なる企業努力のもと良い窯が作られています。窯は大切な設備です。まずは窯のことを少し知ってみてください。
窯を造るときには、鉄製のフレームの中にレンガを積んでいきます。
フレームには直接火があたるわけではありませんので、一見関係ないように見えますが、実は大有りです。窯の内部は、1200度以上に温度が上昇するわけですから、その熱で窯全体がかなり膨張します。そして、膨張した窯は冷却時に収縮します。
小型のガス窯でも、レンガ数百キロを使用していますから、その力はバカにできま せん。それが窯焚きの度に繰り返されます。そして、そのひずみは、その窯のもっとも弱いところに現れます。たとえばレンガの壁にヒビができる、などです(レンガの積み方にもよりますが)。
また窯の耐用年数を考えなくてはいけません。
長く使い続けた窯はどうなるでしょうか。ガス窯などは、レンガを崩して、も う一度積みなおします。つまり、フレームは、レンガの寿命の何倍も長持ちしなくてはいけません。
わたしたちの窯では、場所によって鉄板の厚み、アングルの厚みを変えています。色見穴があるところや、重量を受けているところは厚い鉄板を使う。また力のかかる所にはたくさんアングルの補強を入れる。普通に考えれば当たり前のことです。ところが、それをやらないメーカーもたくさんあります。窯で発生する熱い蒸気は鉄を腐食していきます。
ペラペラのボソボソになった鉄板を何度も見てきました。いい加減な仕事は必ず露呈します。
手を抜けるところはどこにもないのです。
●耐火レンガと耐火断熱レンガ
陶芸窯に使用されるレンガは大きく分けると2種類あります。耐火レンガと耐火断熱レンガです。
露天で使用される、登り窯や穴窯に用いるのが耐火レンガで、多くの人が目にしたことがあると思います。重たくて、カチカチです。機械を使用しないと切断できません。手で加工する場合はメキリという道具で割る、という感じです。硬いので、当然、物理的に強いわけですから、薪が当たっても大丈夫なんですね。また耐火レンガは温まりにくいのですが、その分、冷めにくいのです。
そして、ガス窯などで使用されているのが、白い耐火断熱レンガです。白くてサクサクしたレンガです。種類にもよりますが、耐火レンガよりもかなり軽いです。耐火断熱レンガは、非常に軽くて、ノコギリで切れます。普通のノコギリではすぐに刃がダメになりますから、専用のレンガノコを使います。
●耐火断熱レンガの種類
窯造りで使用する耐火断熱レンガ、一体どれぐらいの種類があるかご存知でしょうか。
数社ある断熱材のメーカー全てがおおよそ、数十種類、もしくはそれ以上の製品をもっているはずです。そのほとんどが国内生産です。表面に使用する耐火度の高いもの、中間のもの、重量のかかる部分に使用するもの、屋根のアーチに使用するものなど、数種類を使い分けて窯を造っています。
通常表面に使うレンガは、耐火度1500℃以上のものを使用しています。それぐらいのレンガを使用しているからこそ、1250℃での長期間の連続使用に耐えられるようになるのです。当然ながら1丁あたりの価格もそれなりに高価です。
窯の値段のかなりの割合をレンガ代が占めています。つまり、安い窯はレンガが安い(耐久性に劣る)ということです。
●壁の厚さ
安い窯は壁が薄いはずです。
小型の電気炉を除いて、通常は最低でも150ミリ程度の壁の厚さが必要です。あまりにも壁が薄い窯、100ミリ以下などの壁が薄いものはおすすめできません。必要最低限の厚みがないと窯の寿命にも影響します。
特にガス窯では窯の壁厚は非常に重要な要素の一つになります。昇温、除冷などに影響し、作品の良し悪しにも関わってくるからです。窯選びの参考にしてみてください。
煙突はどうやってつくるかご紹介しましょう。
まず1.6ミリ厚の決まった寸法に鉄板を切断して、ローラーで曲げます。
それから器具で固定して、溶接で仮付けしていきます。こうしてパイプ状の部品を必要な数つくります。
分割するところに厚さ6ミリのフランジを取り付け、先頭の傘、窯につける3.2ミリ厚のベース板などを全て仮づけしてから、本付けします(薄い鉄板の溶接は難しいんですよ)。完成したらメッキ屋さんに運んで アルマ加工をしてもらって完成です。
よく陶芸窯の煙突で、既製品のストーブの煙突みたいなものを採用している会社があります。しかし、ガス窯や灯油窯でこのような煙突を使うのは不安です。薄すぎます。必ずアルマ加工をしている煙突か、ステンレス製のエントツを採用している会社を選んでください。
灯油もガス窯も煙突の設置が必要です。屋根か壁に穴を開けないといけません。
2階がある建物では横カベから出すことができます。しかし、だからといって安直に90度に煙突を曲げることはできません。
煙突を直角に曲げてしまうと、煙突への排気の引きが悪くなり、非常にコントロールしにくい窯になってしまうからです。焚けないといったほうがいいかもしれません。(しかしこういう工事をする会社はたくさんあります)。
温度の上昇をどうやってコントロールするのか。
それは、火力と、煙突への「引き」のバランスをコントロールすることなのです。引きがいい煙突の「引き」を押さえることはできますが、引きが悪い煙突の引きを良くすることはできません。
煙突工事にはメーカーの姿勢があらわれています。